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車載HIDの小型水槽への応用 since2004/8/31 |
小型水槽にもメタハラを設置したいという要望があります。白色光,高演色性という枠の中ではミニマムが70Wとなり,小型水槽では水温上昇の点で問題があります。昨今35Wタイプのメタハラが車載用ヘッドランプを核として出回ってきました。この35Wタイプが水槽に応用できなか検討してみます。 |
35Wのメタハラは電材用(一般照明用)にも数機種が存在(2004年8月時点)します。この電材用と車載用では何が違うのかを技術的観点からまとめると下記の様になります。 |
左の写真は車載用のメタルハライドランプです。車載用のHIDランプ(車やバイク関係の業界ではバーナーとも呼ぶ様です)は即時の再始動を可能とする為,アルゴンガスではなくキセノンガスを高圧で封入してあります。これにより始動電圧と再始動電圧に大きな差が無くなります。しかし電材用のメタハラの始動電圧が1.5kV程度なのに対し,車載用は15kV程度と非常に高い電圧が必要となります。
また,始動時には約倍の電力を投入しても良い仕様になっており始動時にハロゲン化金属が熱せられていなくてもキセノン発光で明るさを補償する事が可能です。 |
左の写真は電材用として市販されている35Wビーム型セラミックメタルハライドです。まずメタルハライドの基礎を語るのに忘れてならないのは水銀灯であります。水銀灯の発光管にはアルゴンガスと水銀が封入されており,電源の印加と共に,まずアルゴンガスで放電します。アルゴンガスにエネルギーが注がれ熱せられると共に水銀が蒸発し,発光します。
メタルハライドランプは水銀の他,各種ハロゲン化金属が封入されており,水銀灯と同様にアルゴンガスの温度上昇と共にハロゲン化金属が蒸発し,発光するものです。 放電開始電圧はアルゴンガスのプレッシャーや温度により大きく変化しますので,一旦点灯し高温になったランプは消灯後は,さめるまで再始動できません。 |
2004年8月現在で市販されている35Wのメタハラはフィリップス社が供給元のCDM-RPAR20マスターカラー(セラミックメタハラ)とG12口金の小型セラミックメタハラおよびEZ14口金の小型セラミックメタハラの3機種が各社メーカーを通じ流通しております。いずれも演色性はRa=85と良好なのですが色温度が3000Kと夕日並のオレンジイエロー色です。
ホットスタートが可能かを確認する為,このランプを車載用HIDのドライバーに接続してみました。始動補償(始動直後から100%の明るさに補正する回路)を解除しても,始動時のターボ電流(グロー放電をアーク放電へ強制移行させる)により瞬時にランプが破壊します。 2004年8月現在で市販されているE26口金の35Wのメタハラ用の灯具はインバーター内蔵の物しかみつかりません。スポットライトまたはペンダント式の灯具が使えると思いますがインバーターごと水槽上部に保持するには強固なアームが必要となります。 したがって小型水槽に応用する長所としては 1)入手が容易。 2)AQ-H70Wなどの既存インバーターのモディファイでバラストが作れる。 勿論,車載HID用のインバーターをモディファイしてもOK。 3)UVカットなど室内照明光源としての品位がある。 短所として 1)ホットスタート不可。 2)車載用バラストはそのままでは使えない。 3)色温度が低くすぎる。 |
車載用HIDは4000k〜9000kと各種の色温度がラインナップされており,水草水槽の照明のみならず海水水槽や室内屋外など多方面への応用が期待できます。
電材用途に応用する場合にはAC電源用のバラストと灯具を開発する必要があります。バラストの一次側には当然の事ながら,通常の電線が使えますが,二次側は20kVを越えるイグニッションが存在しますので,電材的発想で給電すると大事件となります。 市販されているランプはバラストとキット化されており,二次側(ランプとバラスト間)の接続を司るコネクターは特殊なものとなります。国内海外メーカーを問わず,この部分コネクターのスタンダードは住鉱テックのコネクターですが,HIDキットメーカーやサプライヤーによっては異なるコネクターが使われている場合があります。又,口金方式の接続規格もあります。 ランプの保持部は車種により数種類存在します。H1,H4,H7などの規格が存在し,LoHiを切り替えるプランジャー機構も持つものも存在します。二輪車用も同様の規格がある様です。 メーカーサイドからのインフォメーションはありませんが,発光色は引力に逆らう上側と重力方向の下側では若干発色が異なっている様です。またUVカットがランプ単体で積極的に行われているか否か,情報がありませんので,UVカット仕様では無いと思われます。演色性に対するインフォメーションもありません。 長所として 1)色温度が豊富。 2)ホットスタートが可能。 短所として 1)保持機構の規格が多数あり複雑。 2)コネクターの種類が多数あり複雑。 3)UVカットなど室内照明光源としての品位は保証されない。 |
ロジスティック
後付車載HIDの流通経路はかなり複雑で,車にあまり興味の無い方はめんくらうかと思います。個人的にも「車は走りゃいい」と思っており,デチューンしたいとも思っておりませんが,小型水槽への応用を考えた場合には複雑な流通経路を無視するわけにはいきません。下記にざっとメーカーから小売りまでの参入業者を列挙しました。下記の他にも多数存在すると思われます。メーカーの中にも実体は製品を製造しておらず右から左へ流しているだけの業者もあったり,直に小売りへ流れていたり,中間にもうワンステップあったり,と実体はさらに複雑です。バルク品を供給しているメーカーもあり,インバーターの筺体にサプライヤーのロゴの入ったシールを貼っただけのものもあり,ブランド名が違っても中身は同じというケースもあります。 |
バラストを含むメーカー | alt="" | サプライヤー及び
メーカーの商標 |
量販店及び小売り | |
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コネクターは下記の様なものがあり流通経路と密接に関係しております。中央が住鉱テックのコネクターで,スタンダードなものです。右はサンヨーテクニカのランプとバラストに用いられているものでコネクターメーカーは不明,左はSJOの印字がありますが,これも出所不明です。いずれも防水タイプとなります。コネクターを他メーカーと替える(差別化する)というのはバラストと交換球の組み合わせを排他的するという意味を持ちます。
しかし,黄色のコネクターはノーブラでチト危ない気がする。 |
□H4タイプ | H7タイプ | H1タイプ |
フランジ形状は上図の様に各種存在します。上図の3種類が全てではありません。 |
H4などにはビームを上向きに切り替えられるLoHiタイプが存在します。マニュピレーターはプランジャーを使用している様です。写真上がそれですが,マニュピレーターが縦方向に付いていて全体がT字形状をしたものもあります。また車種によってはセードと呼ばれる筒状の反射板が必要な場合もあります。 |
車載HIDのイグナイターは20KV程度のパルスを発生します。イグナイター電圧の測定にはオシロスコープに1000:1のプローブを接続する方法が考えられますが,パルス幅が小さく,繰り返し時間が長い為,アナログオシロでは輝度が得られず,観測しにくくなります。高速サンプリングのデジタルストレージでなんとか測定する事ができます。但し,プロービングと共に波高値が落ちてしまい測定精度が得られないばかりか,オシロが破壊する事もあり得ます。ちなみに私は作業中に電力計を壊し,修理にだしまた。 |
そこで左の写真の様なギャップの距離が可変できる放電ギャップを作りました。ギャップの距離を測定し,公式により放電電圧に変換測定します。E=24.05d(1+0.328/√d)が式です。距離dの単位は[cm]です。写真は約5mmのギャップに強烈な放電が起きており,17.55KV以上という事が解ります。 |
測定は距離を換えては電圧を印加し,放電確率が50%となったポイントを用いる事にしました。距離は写真の様にノギスにて測定しますが,電源が切れている事を確認してから行います。よい子は真似をしない様に! |
さて,イグナイターが発生する危険な高圧パルスを封じ込めるにはどの様なノウハウが必要かを検討します。写真はギャップのあいだにコイルの層間紙などに使う絶縁グレードの高い15mm角に切ったテープを挿入してみました。ギャップは6mmに設定します。 |
何と6mmのギャップとテープの表と裏あわせた沿面約15mmを通り,放電しました。6mmのギャップのみでは放電しますが,8mmあれば絶対に放電しません。絶縁物であるテープ(高分子材)の表面では振る舞いが異なる様です。文献では沿面放電とあります。 |
角度を換えて写しました。
バチッ! 恐ろしや・・・ |
得られた結論として,イグナイターの出力は沿面放電に注意を払う必要があるということと,空間距離は10mm以上が確保できれば良い事になります。
ランプとインバーターを接続するコネクターはコネクターのハウジングに高分子材料が使われており,沿面放電が発生する危険があります。沿面放電を避けるには電極を完全にクローズさせる必要があり,防水構造の単極コネクターを使用する事は必然となります。 車載HIDは車のボンネット内部に装着される為,電源側にも防水タイプのギボシ端子を使います。HIDの二次側に使われている防水構造の特殊コネクターを,単純に水濡れを避ける為と解釈しますと,水槽などの一般照明への応用でとんでもなく危険なコネクターを選定する事になりかねません。防水構造は防水だけの意味にあらず,絶縁性能の確保にもあるという事になります。 |
車載HIDのバラストはバッテリー用のものとAC100Vを電源とするものの開発は既に終了しております。しかしながらまだ幾つかの難問が立ちはだかっております。上記コネクターの種類やランプ入手経路の問題,下記シーリングの問題,最後にランプハウジング(灯具)の問題などです。とにかく20kVは厳しいのであります。 |
左の写真が住鉱テックの防水コネクターの凸凹です。雌ピンのハウジング側(右)には防水用のシリコンゴム製ハウジングシールがはまっております。 | |
雄ピンのハウジング側(左)はこれを包む様になっており,コンタクト部分を外界から隔離しております。 | |
しかし,このままではハウジングと電線とのあいだに隙間があり,この部分にシリコンゴム製のワイヤーシールを挿入します。このワイヤーシールとハウジングシールがあるおかげで完璧なる漏電防止機能が期待できる訳です。 | |
しかしながら最近のバーナー(ランプ)Assyやインバーターの接続部ワイヤーシールには左の写真の様な外側から被せる様なものが用いられております。実際に上記インナータイプのワイヤーシールをアッセンブルしてみるとわかるのですが極めて作業性が悪くコンタクトと共に圧着する構造である為,自動化も困難です。したがってこのアウター式のワイヤーシールはケーブルアッセンブリーメーカー或いはセットメーカーが起こしたものと思われます。このアウター式のシール性能は信頼性が保てるのか疑問です。ちなみに容易にハウジングから外れて電線中央に移動してしまいます。 |
実はこのプロジェクトを実行するにあたり,ユーザークレーム品を集めました。この中にイグニッションパルスがランプセードに放電してしまう物がありました。ここでいうランプセードとはランプのフランジにかしめてある筒状の小さな反射板の事です。写真はこのセードを外したもので,リターン電極(写真の赤い矢印)とセード間で放電が起きるものでした。原因はなんと誤配線で,イグナイター側にリターン電極が接続される様になっておりました。誤配線といってもユーザーがやったものではなくランプをアッセンブルする時の作業ミスと思われ,そのままモールディングされたのだと考えられます。アフターマーケットカー用品は品質悪し。 |